2024.01.27
お客さまにお伝えしたいこと
・新興国通貨建て債券は、見た目では魅力があるが、落とし穴がある
・新興国はインフレ率が高くお金の価値が下がり易いので折角の高金利が帳消しになる可能性がある
・新興国の通貨は為替レートでもコストが割高
新興国通貨建て債券は一時期「金利水準の高さ」を売り文句に人気商品となりました。ブラジルレアル、南アフリカランド、トルコリラなどの現地通貨建て債券の提案を皆さまも一度は聞いたことがあるかもしれません。以下の図に示される通り、現在でも利回りは10%を超えており、債券からの決まった金利収入があるなど見た目はかなり魅力的な商品に感じます。
但し、実際には投資してから金融商品が値下がりしてしまっていたことも多かったのではないでしょうか?その落とし穴はどこにあったのか、今回はこの点についてお話ししたいと思います。その際にポイントとなるのはインフレ率です。総じて、新興国はインフレ率が高くなっています。インフレ率が高いと同じお金で買えるモノの量が減ってしまい、お金の価値が下がってしまいます。それに伴ってお金を交換する為替レートも下がって、投資した金融商品の価値も減ることになります。例として、5年前に日本では100円 トルコでは1トルコリラで販売されていた商品が現在日本が100円のままに対してトルコではインフレにより5トルコリラへ高くなっていた場合、トルコリラを交換するお金の価値(=専門用語で購買力平価と呼びます。)は1/5に減っています。金利の高い債券に投資しても、その国のインフレ率が高くてそれ以上にお金の価値が減ってしまっては元も子もありません。
以下のグラフは2003年以降のインフレ率(消費者物価指数の前年比)の推移です。ブラジルや南アフリカではインフレ率が高まる時期には10%を超える水準(〇で囲っている部分)となり、トルコに至っては2023年以降はピーク時で80%を超える水準(□で囲っている部分)となっています。新興国の債券の利回りが高いことが魅力的に見えたとしてもインフレ率が高くなるとお金の価値が下がって帳消しとなる 可能性があるので要注意です。
もうひとつ新興国通貨建ての取引で注意が必要すべきなのは売買の際に適用される為替レートです。一般的に「為替手数料」と呼ばれていますが、実際には外貨取引に際して金融機関が利ざやを乗せているもので、外貨取引から金融機関が獲得する儲けとなります。お客さまが取引するベースとなるTTS(対顧客電信売相場)やTTB (対顧客電信相場仲値)と実勢値である為替レートTTM(仲値)との差について、主要通貨である米国ドルよりも新興国通貨は高く設定されています。
直近時点で主要通貨の利ざや(≒お客さまにとってはコスト)が総じて片道1-3%程度に対して、新興国通貨では南アフリカランドが19.5%、トルコリラでは45.8%となっています。実際に取引する為替レートは金融機関(銀行・証券会社)や取引形態(外貨取引・投資信託)で異なりますが、ベースとなる水準がここまで高いことを踏まえると、新興国通貨建て資産へ投資することは慎重に考えるべきかと思います。
【コラム担当者】森岡 寛将(もりおか ひろまさ)
2023年4月に最高運用責任者として株式会社アンバー・アセット・マネジメントに入社しました。アンバーアセットマネジメント入社以前は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社で運用責任者としてETFを含めた株式インデックス運用、株式アクティブ運用や高配当運用、マルチアセット運用など約60プロダクトの運用を統括しており、豊富な運用経験があります。更に運用経験だけでは無く信託財産計理やリスク管理などの造詣も深く、資産運用に関連する全ての業務に精通しています。豊富な運用経験より得られた知見に対して、日本経済新聞社などのメディアからも関心を受けて、取材先として記事の材料に採用された実績もあります。
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